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 「これはひどい。」

アニメの絵を見て最初に、思わず口から声としてこぼれてしまった一言です。「FALCOM MAGAZINE 特別出張版」という無料冊子が店頭に置かれていたので入手し、ぺらぺらと目を通していてこのイラストに出会い、驚きを隠せませんでした。

 「英雄伝説 空の軌跡 THE ANIMATION」なるものの制作が進行しているらしいです。日本ファルコムが近頃ゲーム以外にも活動を広げているから空の軌跡のアニメ化もあるだろうなと思っていたところでそれが実現しようとは。

 見てすぐに、キャラクターデザインがあまりにも酷過ぎると私は感じました。どうひどいかというと、ゲーム内の絵とまったくもって似ていないということです。手に入れた冊子にはこのアニメの監督をする橘正紀さんのインタビューが掲載されています。その中で、ゲームのグラフィックが以前よりもよくなってきたことや、感情移入できるアニメにしたいことも語られているのですが、それら監督の想いをキャラクターデザインの段階で既に達成不可能にしていると私は思いました。

 見たことのある絵柄だと思ったら、キャラクターデザインを担当しているのは「野崎あつこ」さん、「東京マグニチュード8.0」でもキャラクターデザインもされていました。この作品、私にとって衝撃の作品でした。涙があふれてしまったことを覚えています。そのときその作品において何にも不満はありませんし、それどころかこの絵柄だったから感情移入できたのだと私は思っています。

 疑問があります。既にゲーム化された作品です。キャラクターも既に存在しています。なのに、キャラクターに自分の「我」を出すのってどうしてでしょう?自分の作品としたいのでしょうか。既にほかの人が作り上げた資産、財産だというのに。

 私はキャラクターデザインは原作があるなら原作に近いほうがいいです。キャラクターデザインを担当する人は原作を尊重し、出来る限り近づけることに注力するほうが作品を大切にしていると感じます。だから、今回空の軌跡のキャラデザは、野崎あつこさん自身が持っているキャラクターデザインに髪型や衣装を空の軌跡風にしたとしか見れません。だって、顔がぜんぜん違います。東京マグニチュード8.0そのままです。この事実からも、今回のキャラクターデザインが原作空の軌跡を無視したもの、野崎あつこさん自身のものと証明しています。今回の企画が、空の軌跡をアニメ化したいのではなく、野崎あつこさんのキャラクターデザインを前面に出した作品のストーリーとして空の軌跡を採用したという受け取り方をしています。

 「おおきく振りかぶって」という作品があります。このアニメのキャラクターデザインを担当した人は原作者と意見を交わし合って「漫画の中のキャラクターがアニメの中で動く」ことを大切に思っているようでした。いかにして楽しんでもらえるものを作るか。これを考える際、まず原作が人気があるからこそアニメ化の話になります。その原作を知っている人たちがアニメを見るとき、原作のキャラクターがテレビ画面で動き回る姿が見たいだろうし、逆にアニメを見て原作に触れる場合もキャラクターデザインがアニメと原作で近いほうが感情移入しやすいと私は思います。

 具体的に「これはひどい」と思ったのは、冊子28ページのエステルからです。そのあと、このティータでは全然萌えられない、ヨシュアのかっこよさがどこに行ったのか、ジンは完全に手抜きなどなど、もう不満が次から次へと浮かんできます。

 再現できていないとはっきり思うのが、オリビエ。彼のようなキャラクターってもう誰でもそのまま設定を使っていいと思うくらい汎用なキャラクター像です。フルメタル・パニック!のクルツ・ウェーバー然り、鋼殻のレギオスのシャーニッド・エリプトン然り。ここにあげた二人はアニメ化されています。原作そのままにアニメに飛び出したキャラクターだと思います。そのくらい再現されています。そうであるがゆえに、オリビエも同様に原作そのままをアニメに再現できるはずです。たどっていって、空の軌跡のほかのキャラクターも原作を再現できるはずです。

 つまりは、再現できるのに、再現しないということをこのアニメ作品は表明しているのだと私は解釈しました。

 私はアニメのカットを見たときに、作品名がすぐには思い出せませんでしたがこの絵は見たことがあると思いました。見覚えがあるということは、キャラクターに特徴があるからこそです。ほかの絵描きにはない部分、独自性、オリジナリティが発現しているからなのです。

 野崎あつこさんが原作のイラストを担当しているならば、私はその作品を楽しみにすることでしょう。しかし、空の奇跡のアニメを楽しむという場合、原作の世界がそのまま動き回るさまを見たいのであり、野崎あつこさんというフィルターを通したものを見たいわけではないということです。ほかの人でも同様です。わざわざほかの人の絵に変える必要がありません。キャラクターに限らず、ストーリーでもですが、「自分の作品としたいなら他人の作品を使うのではなく真に自分のオリジナルの作品で自分の思いの丈をぶつければいい」と私は思います。

 冊子にはこれからアニメ化に向け本格始動と書かれています。それならば、今作るのを踏みとどまってもう一度アニメ化を再検討できないものでしょうか?とりあえず、原作ファンの期待には沿わない作品となりそうだと私は思うのですが、アニメ化を取り仕切る監督がどのように考えているのか知りたいものです。舵を切ったからにはもう進むしかないと考えているのか、いったん立ち止まって嵐を回避することを選択できるのか。原作を作った日本ファルコムは英雄伝説シリーズの人気がこのアニメ化を通じて「本当に」拡大できると考えているのか。私はできれば、できればアニメ化するにしても最初の最初からやり直してほしいと心の底から願っています。





蛇足

 FALCOM MAGAZINE 特別出張版で、面白いなと思ったのが、「英雄伝説 碧の軌跡」のメインキャラクタープロフィール。ほかのキャラクターは名前の下にCV(キャラクターボイス)として声優さんの名前が記載されているのですが、オリビエのところだけ、名前がオリヴァルト皇子、そしてCVのところが自分自身になっています。おいおい、どうやって自分を自分で声当てるのかと思ったらおかしくて笑ってしまいました。



追記

 これを書いた後で思ったのは、ドラゴンクエストシリーズもシナリオ・ゲームデザイン担当の堀井雄二さん、イラストレーション担当の鳥山明さん、音楽担当のすぎやまこういちさんというトライアングルが崩壊したとき、スクウェアエニックスはこのシリーズの存続をどうするのかということです。私にとっては、このチームの終了はドラクエシリーズの終了だと思っているし、できれば開発終了してほしいと思っています。たとえば、キャラクターデザインがあのスタジオジブリに変わったとしてもそれってドラクエ?と私は思ってしまいます。違うスタッフの下で新しいドラクエとなるよりは、違うスタッフがそろったのならばまったく新しい別のシリーズが生み出されてほしいです。今回のも英雄伝説の別のシリーズとしてまったくのオリジナルであったならよかったのにと思わずにはいられません。
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2011.07.20 Wed l マンガ l top ▲
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